むかし道から行く、新緑の六ツ石山 

靴 ゴールデンウィークも終盤、やっと天候も回復しそうだということで、日帰りで六ツ石山に行ってきました。肌が染まってしまうような山毛欅の新緑と沢の清流が印象的なおすすめコースです。

【日 付】 2001年05月05日(土) 晴れ
【場 所】 奥多摩六ツ石山 1478.8m / 標高差 1100m
【行 程】 登山口…六ツ石山山頂…下山
9:00  12:00-13:00 18:30


奥多摩行きは早起きが鉄則
 04:00 起床
木蓮は既に準備を終えていた。いつものようにおにぎり、テルモスにお茶とコーヒーを整えて私の覚醒を待っていた。熱い珈琲と目覚めの煙草で意識を戻していく。すばやく洗顔を済ませ、草履スタイルで車に乗り込んだ。

 04:30 自宅を出発
自宅を出て環七に向かう。眠らない都会の街もこの時刻は仮眠状態にある。起き出すとはなはだやっかいだ。新青梅街道に入る。奥多摩までほぼ一直線の道。東の空が次第に明るくなって行くが雲が低く垂れ込めている。快晴の予報はどうやら外れたようだ。奥多摩街道に入った。ここまで来れば大丈夫。途中のコンビニにて昼食とお菓子を準備した。店内は連休最後の休みを共に過ごす家族で賑わっていた。そういえばこの街道沿いには至るところに釣り堀があった。07:30奥多摩湖に到着。運転の疲労を覚えたので少し仮眠を取ることにした。08:30覚醒、ちょっと寝過ごしたかな。

「奥多摩むかし道」を歩きはじめる
 09:00 支度を整えて出発
水根沢バス停前の食堂脇から水根村落に向かう。「奥多摩むかし道」を2年ぶりに歩き始める。見上げた畑の周りに青の紋様の入った昔懐かしい陶製「金隠しトイレ」があった。今となってみれば滅多にお目にかかれない代物。紅紫色の木蓮が庭先にすくっと咲いていた。家々の庭先で畑仕事をしている人と短い挨拶をする。民家を抜けて杉木立の密集する坂道を登り始める。ほどなく荒れ果てた小さな祠に会う。地図を見て標高を確認する。意外と早かった。標高を示す指標が設置されているのは判りやすい。

一気の坂道で心臓がばくばく言う。ほぼ直登ルートである。奥多摩でも一、二を争う急登というのも頷ける。先行する夫婦連れをやり過ごし、次第にペースをあげて行く。見覚えのある分岐道(トウノクボ)に出たので休息タイム。水をたっぷり飲み「アンパン」を一個平らげる。ここからは広葉樹の林を歩く。ほどなく防火帯の稜線に出た。バイケイソウはまだ土の中にいる気配。稜線を囲むように茂る木々もようやく芽吹き始めて薄い緑の色を纏っていた。ツツジの蕾はまだ開いてはいなかった。小さなスミレを愛でながらゆっくりと山頂を目指す。ここから先はのんびり散歩気分で歩いた。

六ツ石山山頂はあいにくの雨
 12:00 六ツ石山山頂
天候悪化の気配。とうとう小雨が降り始めた。たちまち地熱と雨の会話が始まり、立ち上り始めた湯気が地面を這うように流れていく。通り雨、ほどなくこの雨は止むだろう。ヤッケを着込み帽子を被って対処する。傘も合羽も持ち合わせていなかった。奥多摩の峰々を眺める、おあつらえ向きの即席のベンチに腰を下ろし、濡れるにまかせて「おにぎり」をほうばった。バーナーを点火して水を湧かす。珈琲はお約束なのだ。次第に人が山頂に集まり始めた。
 「わあ、ここが山頂なの!」
 「意外とあっけなかったわね〜」
そうこうする内に雨脚が弛んできた。視界が開けて「カヤノキ尾根」が見えてきた。 晴れていれば鷹の巣山を目指す予定だったが、生憎の天候だ。一度辿った水根沢経由で下山することにした。 体が覚えている道だから時間も読める。

 13:00 下山の道を間違えた!
見覚えのない急な下りが続く。不振に思って通りすがりの人に聞いた。なんと奥多摩駅方面に向かって歩いていたのだ。一瞬方向感覚をなくしてしまった。そういえば山頂から降りてくる時に左折する道があった。あれが石尾根だったのか。昔の記憶もあてにならないものだ。単純な思い込み。地図と磁石を確認する作業を怠らなければ防げた間違いだ。赤恥青恥とはこのことだ。再び六ツ石山方面を目指す。木蓮が盛んに「ブーイング」。すたこらさっさ、私を置き去りにして姿を消した。登り返す労力は斜度があるだけにきつい。元に戻るまでに往復60分を要した。

水根沢に至る道は新緑に染まっていた
将門馬場を経て水根沢に至る道は思いの外荒れていた。雲取山から下山してきた登山者とすれ違う。テント組が多かった。雲取山、いつかは登らなくてならない山と思っている。登山道の両脇に並ぶブナの林に見覚えがあった。木肌に触れて水の流れる音がしないかと耳をつけたことだった。

木 木 細かく地図を見、尾根筋を確認しながら歩いていくと、小さな指標が見えてきた。ここからが水根沢へ至る道。足下に判別できない文字の案内板が置かれている。仕事道なのだろうか、道がずいぶんと荒れているように思えた。よほど注意しないと見落としてしまう。地図を開き、確認する。歩いた時間と距離感がなかなか一致しない。

下りが始まったとたんに両関節の痛みが始まった。さきほどの通り雨が膝を冷やしたのか、それとも六ツ石山からの急激な下りに膝が耐えられなかったのか、、。これはヤバいことになったなあと思い、膝を騙し騙し下山を開始した。転がっている木を杖代わりに使ったが、負荷をかけるとポキリと簡単に折れて使い物にならない。休み休み、おっかなびっくり下山を開始する。もし動けなくなったらどうする、その思念が頭を過ぎった。時間はかかるだろうが、一歩一歩下れば里には下りつくだろうし、まだ陽も高い、非常食の蓄えもあるさと自分を安心させた。消炎剤とツェルトがあれば完璧の対処だった。山懐に入る時には必須の基本道具と肝に銘じたことだった。

沢ぞいの壷でイワナ釣りを見物する
工事シートを被せた簡単な四阿の下で、登り一緒だったご夫婦と再び出会う。
 「あれ、さきほど下山した人たちでしょう」
 「ははあ、奥多摩方面に道を間違えてしまって」と照れ笑い。
 「おまけに膝を痛めてしまいまして」

池 沢の沿いにいかにも魚が居そうな大きな壺があった。ご主人が釣竿を出してイワナを釣り始めた。餌は鮭の卵。興味津々の私。
イワナの顔が拝みたいとばかり休息タイムを宣言。ギャラリーは多いほどいい。珈琲を立てて、ご夫婦に振る舞う。お礼に高価なチョコを一枚いただいた。まるで藁しべ長者の気分だ。奥さんが植物図鑑を離さない妻に路傍の花を指して「これはなになにで、、」と教えてくださる。 深い蘊蓄なしには語れない言葉だった。
ご挨拶の名刺をいただいたものの、こちらとしてはお返しするものを持ち合わせていない。恐縮した。待望のイワナが釣れた。ビニールの袋に収まったイワナを見せていただく。妻も興味深げに覗き込む。ぴちぴち元気がいい!「天然のイワナはおいしい」とご主人。嬉しそうにほころぶ顔が若々しかった。

長い冬の季節に堪え、ようやく芽吹き始めた若葉たちの匂い。一年中で一番美しい季節の始まりだ。日を追うごとに彩りを重ねて、やがて緑深い森になっていくだろう。痛む脚を引きずりながらも木漏れ日の射す緑の森を堪能しながら歩く。沢の音もすがすがしい。 ようやく橋を渡る。ここまでくれば傾斜も少なくなる。先が見えてきた。さきほどのご夫婦が、どうやら私の脚を気遣って速歩を緩めていただいている気配だ。更に恐縮した。

 18:30 下山完了
奥多摩湖到着18:30。本来なら16:00下山の予定であった。道を間違えたこと、脚を痛めたこと、珈琲タイムをもうけたことなどを考えあわせても順調であったかなと自賛する。秋ならばとっくに陽が暮れて真っ暗になっている時刻だ。桑原桑原。
東京へ向かう街道は連休帰省のピークもあって混雑していた。長崎チャンポンで腹を膨らませ、自宅に帰りついたのは23:10頃であった。脚の痛みに転げまわったことだった。
文責: 青島原人


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