島々〜徳本峠、雪の涸沢テント泊 

島々から徳本峠を越えて涸沢に行ってきました。
はっぱ 当初予定の奥穂高岳は雪で断念しましたが、すばらしい錦繍の秋を逍遥してまいりました。 登山を始めて一ヶ月で穂高を目指し(登山歴10年の相方あってのことですが)、 見事に頓挫してしまいました。(笑)これまでに、訓練と称して、 赤城山谷川岳尾瀬 と矢継ぎ早に疾走し、ここまで来ました。
以下は、その最終目的の穂高頓挫顛末記録 です。

【日 付】 1997年10月9日(木)〜12日(日)晴れ、雪、雨
【場 所】 島々〜徳本峠〜明神〜涸沢〜上高地
【行 程】 (10/09) 島々…二俣…岩魚留小屋…徳本峠小屋
     5:40 8:10 11:22    16:50
(10/10) 徳本峠小屋…明神…横尾…本谷橋…涸沢
     9:00   12:00 14:30   17:50
(10/11) 涸沢…本谷橋…横尾…徳沢園…河童橋
     8:00 10:10 11:30  13:10 15:50

10/8(木) 夜行列車で山に向かう
 21:10 自宅を出発
電車、バスでの山行きは初めて。登山靴を履き、ザックを背負って自宅を出るのも初めて。 バス停から駅までガラガラのバスに乗り、JRに乗り換える。勤め帰りの人達の目線を感じるのも新鮮。

 22:50 新宿駅にて急行アルプスに乗り込む
22:00に新宿駅に到着。6番線にて、23:58発の急行アルプスを待つ。 丁度、前のあずさが入線してくるところだったので、次発の囲みに並ぶ。 発車の1時間も前に着いたのにそれでも前から5番め。 風を除けて階段の脇に陣取り、テントマットを敷いて座る。 駅の売店で明朝の弁当、昼の握り飯を仕入れる。水を汲む。自由席を求めて早々と到着し、 ゴロンと横たわる人、中年のオバサン族、それぞれに山に向かう人々の姿。冷えてきた。
22:20、入線、乗車。8分の入り。発車までには満席になる。さきいか、笹かまをつまみに、 缶入りの水割りを飲む。アルコールで寝る算段。ちらほらと混じるサラリーマンは肩身が狭そう。 23:50、発車。話し声でなかなか眠れない。明日は山だというのに、 どうしてみんな寝てくれないのだろうか。

 ◆  ◆  ◆

10/9(金) 島々から徳本峠までは遠かった、、
 1:00
漸く眠りにつこうかという頃に車掌の検札。新宿までの乗車券しか持っていなかったので、 ここで清算しなければならない。必死に瞼をあげようとするが、睡魔に勝てず。 そのままうとうとと浅い眠りに沈む。 3:00、覚醒。車内のトイレで顔を洗う。歯を磨きたいが、歯ブラシは ザックの奥深く眠っているので果たせず。次回からは、携帯用のモンダミンを ウエストポーチに忍ばせようと、心中にメモをする。 代わりに冷えた缶コーヒーで口直し。 [思えばこれがいけなかった] 皆、もそもそしだす。3:10、茅野。上諏訪でポイント切り替えのため10数分の停車。 どうやら、例のあずさの事故の影響らしい。3:27、茅野発。15分の遅れ。 松本電鉄との接続と切符精算の時間が気にかかる。

 4:27 新島々に到着
[松本電鉄は3分だけ待つそうです]の車内放送に、皆、 ザックを背負って松本駅構内を走る! 松本電鉄車内は山行きの人でラッシュ並の混雑。明日は平日なのに? 4:47、新島々到着。案の定、清算窓口は大混雑。 皆、切符を買う間もなく走ってきたのだから、さもありなん。寒さの中で立ち尽くすこととなる。 バスの定刻もなにもあったものではない。5:10、やっとのことで清算を終え、 外の券売機で宿までのバス乗車券を求める。270円也。 バスもまた、補助席を使用する程の混雑。宿までなので最前列に陣取る。 5:18、バス発車。車内放送にて、帰りのバス整理券についての説明。 [この時からこの整理券とやらが気にかかってはいたのだ]

 5:43 徳本峠入り口から歩きはじめる
5:20頃、徳本峠入り口に到着。まだ薄暗い。空気が冷たく、手袋が欲しい程。 新宿で仕入れた弁当で腹ごしらえをする。どうもアルプスで缶コーヒーを飲んだあたりから、 腹痛がする。食事を摂っても回復しない。やばい。相方に知れるとどやされるので黙っている。 看板の前で写真を撮って出発。先行して二組程歩いて行った。既に夜は明けかけている。 最初は車も通れる程の広い砂利道。コースタイムの倍をイメージする。7:10、橋を通過。 このあたりで腹痛が激しくなり、引き返すことを考慮に入れざるを得ない状況に陥る。 時折、輸送の車が行き過ぎる。 [乗せてくれー]だが、自分の足で歩くのだ。 二俣まで行ってから判断しよう。

 8:10 二俣
休憩をとる。依然として腹痛はあるが、峠は越えたようだ。 [ここまで来て諦められるか!] ここから岩魚留小屋まで3時間余り。いよいよ本境に足を踏み入れる。 渓流の音が耳を離れない。深山渓谷、病葉がいたるところに散っていた。 都会育ちの身には初めて知る風景だ。[素晴らしい]のひと言。
丸木橋で川を右に左に横切る。10:00、瀬戸上橋。途中で二組くらいのパーティ (うち一組は単独)に抜かれる。徳本峠からの下山組も居た。

 11:22 岩魚留小屋
バーナーを取り出し、コーヒーを沸かす。握り飯とパン、スープで昼食を摂る。 今にも壊れそうな小屋の佇まい。空は高く、陽射しが眩しい。絶好の天候に恵まれた。 1時間程休憩して、12:30出発。いよいよ徳本峠を目指す。いささか強めの傾斜が頂上まで続く。
木 植生が素晴らしい。落葉樹の深山は黄色に彩られ、橡、桂、山毛欅の大木が清流の上に茂り合っている。 足下は降り積もった橡の葉で柔らかだ。道脇には羊歯や茸、水が豊かなのだ。 道は幾度も流れから遠ざかりそうになるが、また寄り添うように川の元へと戻り、 繰り返し繰り返し小橋を渡る。途中、何度もくじけそうになる。どっかこの辺でテントを 張るわけにはいかないだろうか、などとつまらないことを考える。 このルートは自分との闘いの道だと聞いていたが、なるほどその通りだと実感する。
とどのつまりが七曲がりの坂である。基礎体力が不足しているのだろう。バテる。 10歩行っては一休み、を何回も繰り返す。途中で追い抜いて行った若い女性の筋力の スバラシさに唖然とする。

 11:22 16:50 やっとの思いで徳本峠小屋にたどり着く
既に小屋には相当の人が居て、2間位のスペースに蹲っていた。 朝方、徳本峠入り口で会った夫婦組が、漸く到着した我々の姿を見つけて声をあげた。 11時間かかった。歩き通したことに、自身、驚いていた。早速、受け付けを済 ませる。一泊二食付き、7500円也。気さくな小屋のおやじさんの [お嬢さんですか?] の問いかけに、相方がムスっとする。あはは。食事までストーブの傍らで休む。 底冷える。持参した酒を飲むと、いつのまにか横になって寝入ってしまった。
18:20、夕食。薄暗いランプの灯りの下で皆で食卓を囲む。野菜の天ぷら等、 心づくしの品が並ぶ。珍しくご飯のおかわりをする。 [食べなくちゃ] 食後早々に床に入って就寝、20:00。割り当てられた寝床は中二階。 這いずりながら移動し、布団に潜り込んだ。

 ◆  ◆  ◆

10/10(金) 上高地に入り、涸沢へ
 7:00 徳本峠小屋出発
周囲のざわめきで目が覚める、5:30。朝日の輝く穂高を見るべく外へ出るが、雲のために果たせず。 寒さが酷しい。6:00、朝食。一斉に並んで粗食をパクつく。温かい味噌汁がご馳走。 食後、ザックの中を整理して出発の準備を整え、戸外でバーナーを焚き、コーヒーを飲む。 穂高の威容を眺めることができた。圧倒的な岩塊が眼前に聳え立っていた。7:00、徳本峠を出発。

 9:00 明神
コースタイム1時間半のところ、2時間を費やす。どうも下りがダメらしい。
明神は、登山者で大変な混雑。明神小屋でトイレに行こうとしたが、故障のため長蛇の列、諦めた。 売店内でホットコーヒーを飲み、煙草、フィルム、カップ入り日本酒を仕入れる。 土産物として布製ポーチを購入。休憩が長すぎるなぁ。[反省]9:40、出発。

 12:00 横尾
徳沢園まで一時間余り。大勢の人達が足早に我々を追い抜いて行く。 我々のペースはそれほど遅いということなのか。 徳沢園に到着。トイレを済ませる。 水場で飲み水を補給。くどいほど涸沢での水場の確認を行った。1時間余りで横尾に着く。 ここから涸沢まで3時間余り。ザックを降ろして腹ごしらえ。 と[お客さーん、並んでくださーい]の声。中高年の[お客さーん]が横尾小屋の前で勢揃い。 小屋泊りか日帰りか、それにしてもザックが軽すぎはしないか? パンとスープ、ラーメン、みかんとコーヒー。どうも我々は休憩時間が多すぎる傾向にある。 [反省、反省]13:00、横尾出発。

 14:30 本谷橋
小橋を渡って松並木を抜け、歩くこと1時間。穂高の背ろに回り込んで懐深く入り込む。 途中、屏風岩の大岩塊を眼前見る。その向こうに涸沢の点景がちらほら。 それにしても人が多い。まさしく行列登山。10/10、払暁から上高地に入山している人の数の多さ。 3時間のコースタイムとあるが、断じて散策タイムではないなあ。 コースタイムというのも随分と杜撰なもの。これで一喜一憂するのはナンセンスだよなあ。

 17:50 憧れの涸沢でテントを張る
石段の続く最後の登り。相方のペースが落ちてきたので、前に立ってリードする。 涸沢の全貌。既に夕刻のため光はなかったが圧倒的迫力。標高2405。 水がふんだんにあり、歯を磨いたり、顔を洗っている人がいた。炊事用の水を補給。 合計4リットル。小屋には人がごったがえしている。おでん売り場まであったのには驚いた。 どうやら名物らしい。これは食べなくちゃ。
おでん テント設営の場所を決める。予めビデオを見ていたので状況判断が的確だった。 雨が降らない設営は楽チン。設営を済ませてから、小屋方面へ[名物]おでんを仕入れに向かう。 既に日は落ちて、月と星が空に満ちていた。 コッヘルにおでんを入れてもらうが、誤って落としてしまう。 くそ〜。再買。

トイレを済ませ[大混雑]、ホカロンを仕入れてテントに向かう。 ヘッドランプの灯りを頼るも、おぼつかない足取り。尾瀬での経験を踏まえて、 手早く食事の支度にかかる。ランタンとバーナー。米をふかす間におでんを食べる。 今回は上手くいった。空気の流れに注意し、時折テントの外に顔を出し、煙草を喫う。 酒を飲む。[明神で仕入れたコップ酒]夕食を終えてトイレに向かう。 外に出た途端、悪寒におそわれる。有料トイレに列。ミルクコーヒーを求めに涸沢小屋に入る。 串刺し状態で、互い違いに隙間無く[ヒト]が寝ていた。 凄い光景だ。中のひとりの女性と視線が合う。笑っていた。 ああなると[先に寝た方]が勝ちである。テントに戻ってミルクコーヒーを温めてめて 眠る準備に入る。ザックを外に出す。シュラフとシュラフカバーに身を入れて灯りを消す。 周りを見ると、灯りを消しているテントが大方。早寝早起きが原則なのだと改めて思う。 月明かりと満天の星。 明日もきっと晴れだろう。[と、この時は思っていた]20:00、就寝。

 ◆  ◆  ◆

10/11(土) 色とりどりの涸沢の天幕に雪が降る
0:00を回る頃より風が吹き始める。地を這う風の響きというものを初めて知ることになる。 強風を受けてテントが撓る。耳を澄まして風の音の行方を探る。とても眠れたものではない。 雨の次は風か。[尾瀬では雨にやられた] パラパラと音。雨か?とテントの外に手をかざす。霰だった。うつらうつらしながら眠りに入る。 目覚しが鳴る。3:00にセットしておいたのだ。4:00頃より再び霰、 みるみる間に積雪となる。うあ〜。
本来なら、3:00に起きて4:30から5:00には発ち奥穂高を目指す計画がオジャンとなる。 降り止まない雪のもとでテントを撤収。手が悴む。雪に対する免疫が無いこと、 アイゼン着用の練習不足。諦めきれずに状況判断を求めて2、3人の意見を求める。 大方は下山。へっぴり腰で下山の列に並ぶ人の数が目に入る。 今シーズン初めてレインウェアを着用する。ここまで来て下山するのは口惜しいが[決断]した。

 8:00 涸沢から下山
下山を開始、8:00。雪の勢いはおさまりつつあるが足元に残っていて、 ゆっくり下山する技術が必要な場面。途中からは積雪も消えたが、時間を費やす。 下山にストックがあったら楽ではないかと思いはじめる。 一列になって下る色とりどりのレインウェアが山中に映える。9:45、本谷橋手前で15分間休憩。 10:10、本谷橋を通過。黙々と歩く。横尾手前の河原で休憩をとる。 宮崎から飛行機で来たという家族がいた。宮崎弁が懐かしい。
11:30、横尾到着。レインウェアを脱ぎ、格納。トイレを済ませて早々に出発。 今日はペースを上げなくてはならない。と、言うものの徳沢園手前で相方が膝の痛みを訴える。 草原でバーナーを焚き、コーヒーで元気づけ、30分休憩。

 13:10 徳沢園でラーメンを食す
売店でラーメンを食べる。美味い!相方の隣席のおばさんのテンション高く、 袖擦り合う相方に必要以上のスキンシップを働く。ムスッ。 早々に食べ終え外でバーナーを使って湯を沸かしはじめるが、風が強く火勢が悪い。 目の前で20年近く使っているという年代物の灯油バーナーを扱う登山者に会う。 強力な火力に目を奪われる。相方の前傾姿勢に [こりゃ、また出費だな]と覚悟する。 14:20、徳沢園を出発。

 15:00 明神
16:00までに上高地に入らねばバスに乗り遅れる、との判断から急ぎ脚となる。 明神までの道のりを1時間40分で走破。風景を見渡す余裕ゼロ。明神到着、15:00。 10分の休憩で即座に上高地に向かう。相方の脚、特に、膝の痛みが激しくなる。 途中、休み休みの歩行となる。15:50、上高地到着。

 15:50 河童橋、バス待ちは長蛇の列
バスセンターから河童橋までバス待ちの列。 ひえ〜。最後尾に並ぶ。 しかし、行きのバス内で聞いた[整理券]の話はどうなったのだ? 拡声器を持った係員に整理券は必要ないのか、と尋ねると、必要ない、との答え。 [思えば、この時にもっとよく確認するべきだった] しかし、もっと親切に案内してくれても。。 この列が沢渡行きと思い知ったのは3時間近く並んだ果てのこと。 恐るべき渋滞で1000人以上が並んでいる。道路工事の影響で道が片側通行になったため、 増発したバスが到着できず、完全マヒ状態に至ったとのこと。 迫り来る暮れ、雨の襲来。結局、持参しているモノを全て着込んでの対処。

19:00近くのガイドの案内で、漸く、並んだ列が新島々行きの列と異なることを知る。 こちらから問わねば、延々と並んだ挙げ句バスが無いところであった。 バスセンター3番窓口で係員を罵倒しながら整理券を手に入れる。 最悪、22:00までには目処が立つとの判断。ターミナルの柱脇でラーメンを作り、食す。 相方にザックを任せ、松本でのホテルの予約のため電話へ走る。 雨で冷えた体と疲労から、0:33松本発、翌5:27新宿着の急行アルプスで帰宅するのは無理と判断。 NTT104案内でで松本駅近くのホテルを聞き、片っ端から電話をする。 考えることは皆同じらしい。どこも満室。が、6件めでヒット。シングルしか空いていなかったが、 交渉の末、2名でOKを得る。これでひと安心。そうこうする間にバス乗車の番となる。

 22:40 松本の宿にチェックイン
20:20、ターミナルからバス発車。4時間を要した。平湯から高山へ通じる道が様変わりしていた。 途中、徳本峠への入り口を通り過ぎる。 [あそこから登ったんだ]と胸が熱くなった。 21:30、新島々駅に到着。列車を待つ。ドリンク剤を飲んで体力をつける。 22:10、発車。22:40、松本到着。駅前の24時間ストアで食料と下着を求め、23:00ホテルにチェックイン。 滅茶苦茶になったザックのパッキンをし直し、入浴。3日ぶり。歯磨きが気持ちいい。

 ◆  ◆  ◆

10/12(日) 松本にて山道具を購入
8:00、起床。ホテルにて朝食。[和定食、1000円也]
10:00、松本市の石井スポーツにて山の道具を求める。ストック、コッヘル、ガソリンバーナー。 5万円弱の買い物となる。[やっぱり、とほほ] 縄手通り、橋の欄干に巨大カブトムシと巨大アリのオブジェがあった。 [道]にてコーヒーを飲む。 14:00、松本より特急あずさに乗る。駅改札にて若い兄ちゃんに声を掛けられる。 新宿までの客、4人を集めて回数券を購入し、旅費を安くあげよう、とのこと。 もちろん、すぐに乗った。あの青年のひたむきさに打たれた。 幸い座ることができた。浮いたお金で買った駅弁を食べ、地図を広げて見入る。 茅野から八ヶ岳が見えるかなぁ、と思ったが雲で不可。
文責: 木蓮


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