里山の紅葉、奥多摩高水三山ハイキング 

北アルプスの余韻も覚めやらぬ11月、里山の紅葉を愛でようと言うことで近郊の高水三山にお気軽ハイキングに行くことにした。小さなザックを二つ並べて、北アルプス以来の部品を詰め込んだ。基本用具で十分だ。お弁当はコンビニおにぎりとインスタントラーメン。松本で購入したガソリンバーナーのデビューの日。水だけはそれぞれ2Lを準備した。

木々 木々

【日 付】 1997年11月某週末 晴れ
【場 所】 奥多摩 高水三山


11月の某週末、新宿からホリデー快速に乗る。大勢の登山者で一杯。まるで登山電車の様相だ。軍畑駅前に小さな商店があった。 冷やかしに覗いて好物のポテチとチョコボールを求めた。 トイレを済ませ靴の紐を締め直して、いざ出発。

豊かな里山の風景が広がっている
線路を渡ってすぐに紅葉の盛りを迎えた銀杏の大木が見えた。 「おおっ綺麗だなあ」と歓声をあげる。 路傍には朽ちかけた草が霜に濡れて晩秋の訪れを知らせていた。襟元を撫でる風もこころなし寒い。 立ち並ぶ家屋、そこに住んで居る人たちの生活ぶりが窺いしれる。木々を燃やす懐かしい匂い。 東京を離れること、おおよそ1時間ほどの圏内に、これほど豊かな里山の風景が広がっていることに 何ともいえない安心感を覚えた。

鋪装された坂道は、かなりの勾配があった。一歩一歩リズムを刻みながら歩いて行った。 魚を養殖している家もあった。分岐を左に折れ更に傾斜の厳しい道を歩いて行くと、 同じくハイキングに来た登山者が休憩を取っていた。そこが登山口だった。ここまで30分かかった。 慣らし運転は完了した。ザックから水筒を出してゴクゴクと咽に流し込み、 持参したバナナで血糖値の補充を行う。ざわざわがやがやと賑やかな会話が流れる登山口風景、ひさしぶりだ。 地図を取り出して等高線を読む。かなりの勾配があるようだ。

曲がりくねった植林の道をゆっくりゆっくり歩いて行くと身体の隅々まで酸素が行き渡るような 感覚が戻ってきた。 サクサクと靴にまとわりつく枯れ草の音が心地よい。 元気のいいおっかちゃん登山隊が前後にひしめいていて、随分と賑やかになってきた。 ハイキング気分がいやおうなしに高揚してきた。そうこうする内にお寺の境内に到着した。 先行組みのハイカーで境内が溢れていた。なんとアイスクリームまで売っていたのには驚いた。 好物だ。ひとつ求めて食べた。寺の後方にトイレの施設があったので拝借した。

高水山から岩茸石山へ
高水山標高759mまでは指呼の距離だ。山頂で早い昼食を取っている人たちがいた。 記念写真をパチリ一枚。急降下して三山の二つ目、岩茸石山を目指す。 木々に掴まりながら慎重に降りて行く。 小なりといえども、これは歴とした縦走コースなのだと、そのとき気がついた。 按部から再び登り返しが始まる。ほどなく岩茸石山(793m)に到着した。

視界が一気に広がり紅葉盛りの奥多摩の山々が一望できた。棒ノ折山へ続く道も確認した。 広々とした山頂、いたるところで人がお弁当を広げていた。まさしくハイキング気分だ、悪くない。 低山散歩こそが山の基本だろう。 薮山から始める山登りが本来の姿だと思う。

19才の夏に、いきなり連れていかれた北国「白山」は標高2700m前後の高山だった。 水筒とおにぎりと夏ミカン一つ。ではないけれど。簡易カッパ、ズックと上下トレパンの簡単な出で立ち。 思えば無茶苦茶な処女登山ではあった。そのズックで雪渓を登ったのだから恐ろしい。 お花畑というものがあり、黒ゆりの匂いを嗅いで顔をしかめた記憶がある。 初めて小屋に泊り、ギュウギュウ寿司詰めも経験した。 山に持参する柑橘類はいろいろあるが、私は夏ミカンに止めを指す。 酸っぱさと苦さが混然として大変美味しい。塩があれば絶品だ。 どうやら白山の時の記憶が重なっているようだ。三つ子の魂というやつだろうか。 (椎名 誠著「ハーケンと夏ミカン」は実におもしろいよ)

ガソリンバーナーの点火式!
ガソリンバーナーの点火式をおごそかに行った。ポンピングを15回ほど行い、 バルブを少し開放するとガソリンが受け皿に溢れる。 そこに点火するとたちまちめらっと発火して炎が立ち上った。 予熱をしなくてがガソリンが気化しないという仕組みになっている。 理屈では判るのだが、直接炎が立ちのぼるというのは、やっぱり驚く。炎が消えたら予熱完了の合図だ。 バルブを開放するとシューシューと勢いよく気化したガソリンが出てくる音。 ライターをかざすとバボッと勢いよく点火した。轟音、、なかなか頼もしいバーナーだ。

定番の「チキンラーメン」。水加減で味を調整できる優れもの。 おにぎりは、それぞれ2個づつ用意した。あっという間に食べ尽くしてしまった。 お約束のコーヒータイムはインスタント。 他に煙草があれば何もいらない。なだらかにつらなる奥多摩の山並が心を和ませてくれる。 岩稜の厳しさはないけれど、里山のあたたかさがある。しかもゴトゴト電車で日帰り可能。 すっかり気に入ってしまった。

惣岳山を経て下山
もう一つのピーク惣岳山が残っている。雑木林を下ると快適な尾根道が続いていた。 再び急登の峰が林の中に現れた。そこを登り切ると神社が建っていた。惣岳山山頂756mだった。 杉木立に囲まれた静かな境内。倒木のベンチに腰を下ろし休息を取る。 ここまでくれば後は下るばかり。下ったところが御岳駅になっている。 楽勝楽勝!先の時間が読める安心から、再びバーナーを出してお茶タイムにしよう。 まるで玩具を楽しむ子供のようなもの。 そもそも男は、幼少の頃から火遊びが(いや大人になっても/笑)好きな動物なのだ、、。

鬱蒼とした杉木立の中をゆったりと歩いて下山し、御岳駅で帰りの電車を待った。 奥多摩始発の電車はすでに満員御礼で人でぎっしりだった。 とうとう中野駅まで座ることができなかった。

文責: 青島原人


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