本栖湖、オートキャンプ初体験 

緑のテント 墓参りを兼ねてオートキャンプを初体験してきました。 以下は、その時の顛末記です。


【日 付】1999年09月25日(土)〜26日(日)快晴
【場 所】本栖湖湖畔「浩庵」/ 料金3000円


墓参りを終え、本栖湖湖畔に到着
5000円札の逆さ富士の絵柄は、ここ本栖湖のモノと木蓮が私に教えを垂れる。どれどれと改めて眺めてみて「なるほど、そうだなあ」としみじみ感じ入った。私の知らないことを(どうでもいいことばかりを)よく知っているので私としては面目を無くする場面がやたら多くて困ったものだ。

湖畔に車を乗り入れる
既にテントが張ってあり、その傍らにはRV車がずらり並んでいた。中には乗用車もあったので、なんとなく安心する。空いた場所に車を止めたところ、ガイジン女性が現れて、
 「ヒヤ、ヒア、、トモダチ、、、テント、、」とわめく。
 「ここは私のトモダチがテント張るから、あんたたちはドッカイケ!」
の意味らしい。 流石に原人、意味するところを直ちに判じたことは言うまでもない。
 「OK、、OK、、」と愛想笑いを浮かべ先住民に敬意を表して車を移動した。それにしてもモノの言い方が実に悩ましくて、うーんガイジンもなかなか素敵ではないかと思ってしまった。(笑)

ようやく場所を見つける
女の子 男の子 若い家族連れがタープを張っていた。かなり大きなものでコールマンの商標が見えた。支柱を立てようとしているのだが風に煽られて心もとない感じ。幼い倅の助けを呼ぶ。手伝わないと帰るぞ!と恫喝一声。可愛い倅が帰られてはならじと必死の形相で手伝いを始めた。まだ保育園児である。妹は更に可愛く、お兄ちゃんの後を縋って、帰らんぞ!とばかりに支柱に縋り付く。うーん泣かせる光景。道具建て、ほぼ完璧という布陣だった。設営も撤収も、あれでは大変だろうなあと人事ながら余計な心配。これだけの道具がオートキャンプには必要なのだ。うーん。私たちにも子供がいたら、きっとああなるに違いない。

その隣で遠慮がちに可愛らしいテントを張り、入り口の前にござならぬ工事用ブルーシートを敷いた。味もそっけもない出で立ちというべきだろう。。さっそくバーナーを出してお茶タイムとする。

食糧調達
クーラーというものを私達は持っていない。キャンプをする以上、これは装備の基本であろう。しかし、無いものは仕方がない。したがって食糧もすべて現地調達ということになった。近くの村にある「YOROZUYA」で、夕餉の支度を整えに走る。
クーラー 献立は、口程にもなくスパゲッティということになる。暖めるだけの「おでん」を前菜にしてビールとワインで湖畔の夜を過ごすという仕掛けだ。まあ、最初はこんなもの。トマトときゅうりを買った。スーパーのビニール袋に入れてワインと一緒に湖に浸した。冷蔵庫代りという訳だ。ワインはともかくトマトとキュウリは水浸し状態となり、食えたものではなかった。やはりクーラーは必要だ。

仮眠を取る
食糧調達も一段落したのでビールを飲む。昼間の酒はやたら効く。そういえば早朝から飛び起きて東名をひた走り、殊勝にも墓石などをたわしで磨きあげ、供養に経文まで読むなどの親孝行をしたもので、さすがに疲弊していたようだ。たちまちビールが身体に回り、心地よい仮眠となった。

黄昏の時刻となったので食事となった
バーベキュー あちこちのテントから立ちのぼる煙、、、焼肉の匂い、、、そうかそういうものかと私は呻いた。そうだそういうものだと妻は細い首を縦に振った。話には聞いていたが、やっぱりテントは焼肉でなくてはいけないのか、、。
焼肉は嫌いではないのだが(そういえばレバ刺をながらく食っていないなあ)シングルガスバーナーの手に負える相手ではない。
おでんを暖め、ワインを飲む。水を沸かしてスパを茹でる準備をすすめる。茹で上がったスパのお湯を落として、味付き缶入り「ミートソース」を注ぎ込む。味はカゴメ株式会社に一任だ。割り箸とフォークで「はひぃはひぃ」と言いながら食べる。なかなかイケテルではないか。

月明かりの下
どうやら満月であるらしかった。が、雲間に隠れて姿を見せてくれない。雲が切れると一瞬だけ放たれる夜光虫のような灯が風に揺れてさざめく湖面に淡い光輪を落とす。燎原に燃え広がる野火のようだ。寂しくも優しい秋の月。
標高3776m、フジヤマが黒いシルエットで浮かんでいる。フジを語る言葉を私は知らない。甚だ無礼とは思うが、この山については多くを語るまい。

ランタンの代用
持参したランタンはうっかりしてホヤを壊してしまった。非常用のローソクをミートソース缶に入れて代用することにした。これはこれでなかなかいいものだ。隣のコールマン家の大きなランタンが2台も点灯していてくれるのでありがたいことだ。

そろそろ就寝の時刻
遊び方を知らぬ悲しさ。飯を食って珈琲を飲んだら、いつもの習慣でたちまちおねんねモードとなった。湖面を渡る風で身体が冷えたせいもある。周囲の盛り上がりは今から佳境に入る様子なのだが、一足先にごめんくださりませでシュラフに隠ることにした。明日は4時に起床して朝焼けの富士を眺めるんだい、、。

 ◆  ◆  ◆

朝焼け
ジッツオ台座の上には67もしくは645のプロ御用達カメラを鎮座させて、朝焼けの絶景を写真に納めんものと、ものものしい出で立ちのおっさんがテントの前で、夜もあけきらぬ内から騒いでいた。刻々と変化する僅かの光が綾なす富士山と本栖湖の絶妙の光景が、いたく彼等の写欲をそそるのだろう。
私は4時には覚醒し、次第に明けてゆく東の空の光を哲学的に眺めていた。で、朝焼けとなったのだが、、、荘厳無比といえるその時の光景も、、、刻々と変化する光のグラデーションは、とてもわたしの拙い筆では書き尽くせぬので省略することにした。いずれ時と場所を替えて書くこともあるだろう。

釣人たち
どうやらキャンプでは釣りが基本的な遊びらしい。三々五々釣り人が現れ始めた。ルアーフィッシングというものらしい。遊びを知らぬ私は興味津々で、散歩と称してオベンキョウに出かけた。うら若いお嬢さんにまず近づき「釣れますか」と声をかけた。無垢な乙女はにっこり笑って「いえ、全然釣れないんです」

。。。更に歩を進める。。。

釣り人 穏やかな風貌のお兄さん。同じくルアーをやっていた。「釣れますか」「いや全然ダメみたいです」しばらく釣の様子を見学させてもらった。絶えまなくリールを巻いている。忙しい釣だ。ルアーの水中での微妙な動きが面白かった。この動きに騙されて飛びついてくる魚も、それはいるだろう。釣り糸を垂れて、のんびりアタリを取るという風情ではなさそうだ。

釣り人 隣のコールマン家の主が竿を持ち出してきた。ルアーではなく餌釣との事。練り餌をつけて岸からすぐそばに仕掛けを落とす。たちまちアタリがあり、15センチほどの小魚が釣れた。ハヤという魚らしい、どうりでアタリがハヤい訳だ。小1時間ほどで12匹ほど釣れた。食べるのではなく逃がしてやるのだそうだ。釣った魚は食べるのではないのか?どうやらそうではなさそうだ。すべては「遊び」なのだと納得した。

遊びと料理
「遊ぶ」ことがオートキャンプの基本なのだと思い知った。「遊び」を知らない私は、ただただうろたえ驚き「遊び」を身に付けなくてはダメだと、ちょっとだけ悄然肩を落としたことだった。はじめてのオートキャンプでわかったこと。遊びと料理、どうやらこの2つがポイントのようだ。

文責: 青島原人


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