シャツセット  両神山は辛かった! 

秩父の名山、両神山へ遊んできました。
以下は、その時の記録兼絵日記ノートみたいなものです。


【日 付】 1999年09月12日(日) 曇り後晴れ
【場 所】 秩父 両神山


秩父の山は奥深い
04:00にけたたましい目覚ましの音とけたたましいカミサンの声で目がさめる。わずか5時間の睡眠だ。起き抜けの珈琲と1本の煙草が実にうまい。洗顔を済ませ湯を沸かし迅速に身支度を整える。赤と紫紺の日帰りザックが仲良く玄関に並んでいる。

05:00愛車ボロワーゲンを駆って関越高速に向う。朝まだき時刻のせいか走る車の姿も少なかった。外環で500円、練馬ICから花園まで1800円の高速料金。花園ICから一般道に降りる。ここから2時間余りを走ることになる。やっぱり秩父の山は奥深い。まもなくオートキャンプで名高い長瀞町を通過する。オートキャンプ、、まだ一度も経験していないなあ。あの大仰な道具建てを想像すると、ちょっとなあ。更に1時間ほど走るとようやく山奥らしい雰囲気になってきた。

落石注意の絶壁に沿って車は奥へ奥へと進んで行く。道が随分荒れている。川底と川岸が同じ高さというのは、どういうこっちゃ?荒涼とした風景がどこまでも続くので不安になった。バンガローが立ち並ぶキャンプ場で2.3のキャンパーが大きなタープの下で朝食をとっていた。先月の異常な雨の影響であることを小屋のおやじさんから聞いてさもありなんと納得した。 07:40白井差登山口に到着。前後して他の車も続々到着しはじめた。簡単に仕切っただけの駐車線。一日1000円とは暴利ではあるまいか。

夏の秩父山系はひたすら暑い
てきぱきと支度を整えて登山口に向かった。白井差小屋で入山届けを記入する。標高差1000m以上の岩山だから、そう容易い山ではないと踏んでいた。道がいたるところで無惨に陥没し痛んでいた。これもやはり雨のせいなのだろう。橋を渡ったあたりから、ようやく山道らしい佇まいになってきた。

木 慣し運転は終わった。靴の紐を絞め直して緩やかな林道を歩き始める。快調な出だし。ほどなく大量の汗が噴き出してきた。夏の秩父山系はひたすら暑い。まして森林歩きは風の通りがまったくなく熱帯雨林の野を歩くようなものだ。ダクロンシャツの効用もあったものではない。昇竜の滝までは一気に登れた。水量豊かな水が一気に下り落ちている。沢の響きも心地よい。風はまったくなかった。ここから一段と傾斜を増して行く。先行していたおじさんおばさんが休んでいたので追従して1本立てる。ひとなつっこいおやじさんだった。
 「ほら、疲れには甘いものがいいよ」
と差し出してくれたのは昔懐かしい「イモケンピ」太い線香みたいなイモケンピをありがたく頂戴して水をガバガバ飲んだ。煙草を1本くゆらせて和む。

急坂、鎖場、オンパレード
更に高さを刻むと御手洗の水場に出た。水場があるはずなんだが、、捜してもそれらしきものはなかった。冷たい水で顔を洗い涼を取る。

ここからが急坂、鎖場、オンパレードとなる。息を切らせてようやく一位ガタワに出る。尾根の峠だ。ここから400m右に行くと清滝小屋がある。ザックが7個ほど無造作に転がっている。姿が見えないところを見ると小屋にでも行ったらしい。のぞき岩の標識がある。視界良好とあるが生憎の曇天。すんなり通過して先を急ぐと神社があった。かなり立派なもの。そういえばいたるところに地蔵さんが居たような。まだまだ周囲を見渡す余裕がないのだなあ。心臓バクバク状態で、それどころではない。

鎖場を何箇所か過ぎたら、ようやく休息場に出た。木造の立派なものだ。ここから両神山(剣ケ峰)までは15分くらいで行けるという。頂上を仰ぎ見て、とても15分で行けるとは思えなかったが、実際歩いてみるとピタリ15分で到着したのには驚いた。

青息吐息、ようやく頂上へ
水筒 11:15ようやく頂上に至る。途中での休息を引けば標準タイムで登ってきた。既に青息吐息状態。8月の南アルプス頓挫以来、トレーニングを怠ってきた報い。ここに来る迄に水を1リットル近く飲んでいる。群雲の間から激しい日射しが照り付ける。9月はまだ夏なのだ。ことさらに秩父の山は暑いのだ。

持参したおにぎりを平らげインスタントワンタン麺を食べた。先行していたおじさん、おばさんは岩の下の僅かな場所で仮眠を取っていた。服に蟻がたかっていたが、そんなことに構ってはいられないのだ。時にアブが飛来して眠りを妨げていたが、そんなことに構ってはいられないのだ。眠いものは眠い。狭い頂上。視界が良ければ360度らしいが既に雲が涌き立ち、そんな風情は微塵も期待できなかった。

三角点の石に触れ、青銅のコンパスを眺めて方向を確認するだけだった。記念写真を撮る。首のない地蔵さんと一緒だ。かわいらしい子供を背負った若いアンチゃんが登ってきた。どうやらおかあちゃんはいないらしい。2才の可愛いさかりだ。危なっかしい足取りで岩場にしがみついている。目が離せない。たちまち周囲の視線を集める人気者。こんな場所まで子供を連れてくるパパはえらいもんだ。拍手だね。

おっかなびっくりの下り
12時半下山開始。急ぐ旅ではなし、ゆっくり行こうと泰然と構えたはいいのだが、どうも下りがおっかない。斜度60度はあるのではないか。及腰もいいところ。ようもこんな登りをこなしてきたなあと我ながら驚く。おっかなびっくりで鎖場を下る。どうも登りより時間がかかってしまうテイタラク。一気に御手洗場の水場までようやく辿り着く。

先行していた人が水場でお茶を沸かして飲んでいた。来るときは気がつかなかったのだが、ちゃんと水場はあったのだ。上流の岩場の流水が飲める水なのだ。登ってきた時は疲労困憊の体だったので、まったく気がつかなかった。情けない。

ここでお茶タイムとする。冷たい水で顔を洗い濡れたタオルで身体を拭いた。気持ちイイ、、、、。ついでに水筒の水をすべて入れ替える。唯一のお土産だ。バーナーのお出まし。疲れた時は甘いものがいい。チョコバーをほうばり熱い珈琲を飲む。インスタントではなく本格的な豆珈琲。珈琲と煙草とチョコレート。絶妙の組み合わせと言える。ちなみに珈琲はブラックが一番おいしい。

下山後は茶話会
15:30白井差小屋到着。あらかたの車は姿を消していた。私のを含めてわずか三台しかない。皆、いち早く下山して温泉に浸っているのだろう。先行して下山していたおじちゃん、おばちゃんが御座を広げてお茶をしていた。私達の姿を認めると大きな声で呼ぶ。
 「こっちへきてお茶飲もうよ。カップ持ってきてよ、、。」
 「はあ、ありがとうございます。」
じつにひとなつっこい夫婦である。こういう人に悪い人はいない。

靴下 靴下 靴下を脱ぐ快感がたまんない。草履に履き替えてカップ持参で仲間に入れていただく。バーナーはコールマンの古い品。年季が入っている。ケトルも黒ずんで、しかもあちこち凹んで使い込まれている。一目して、相当なベテランと判った。

たちまち茶話会となる。僅かの時間で打ち解けるには虚心坦懐が一番だ。私達の自己紹介をしおじちゃんおばさんの紹介などの話に花が咲いた。おじちゃんは62才、おばちゃんは55才ということが判明した。おじいちゃんは若い時から山をやっていて
 「若い時に遭難しかけておふくろに怒られて、心配かけたらいかんと思ったから山を止めていたんだが、おふくろが死んでからはまた再開しはじめたんだよ」
 「ソーナンですか、、」
と私が言うと55才のおばちゃんが腹を抱えて笑ってくれた。屈託のないおばちゃんとおじちゃんである。埼玉の田舎に住んでいて、子供たちもそれぞれに成人して結婚していることなども出た。

カップ パン カップ

こうなりゃこっちも遠慮はなしで「本音」で語ることになる。笑い声がひとしきり山にこだまし楽しい時間を過ごさせていただいた。お茶のお礼に写真を撮り、住所をメモして「さようなら」。満足しての下山となった。

シメはやっぱり温泉
来た道を引き返して「薬師の湯」に向かった。入浴料600円を支払い、頭の先から爪の先まで念入りに洗った。綺麗さっぱり極楽気分モードとなり、お酒でもあればたちまち往生気分にひたれる雰囲気だった。

かくして帰着したのは22:00。延々18時間に及ぶ「遊び」は無事完了した。
翌日朝からの激烈な脚の痛みに堪えながら仕事を再開。痛みが治まるまでに2日を要した。しかしこの痛みの余韻は実に心地がいい。8月の山行以来、基礎トレを怠った報いであった。
両神山1723m、標高差1100m、かなりキツカッタなあ。

文責: 青島原人


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