"じい"と"ばあや"の"冒険" 

キャンプは初めてという妻の両親を連れて廻目平に行ってきました。
以下はその時の顛末記です。

もみじ もみじ もみじ もみじ もみじ もみじ もみじ もみじ もみじ もみじ

【日 付】1999年10月08日(金)〜09日(土)晴ときどき曇り
【場 所】廻目平キャンプ場


"じい"と"ばあや"を"大冒険"に誘う
妻のパパとママに「キャンプ遊び大冒険」を体験させてやろうではないか、、、。
いわば親孝行のまねごと気分のノリで発案した私。バカ婿なりに、これでも気を使っているんだからなあというところを示さなくては。予想通り、経験したことがないという。何、そういう我々も先日経験したばかりの素人である。一度の経験でキャンプに誘うとは、いささかおこがましいのではないか。。。

ウェア ウェア 私達の提案に「待ってました」とばかり飛びついてきたおとっちゃん、おかっちゃんは今年65才と62才。おとっちゃんは出不精の気難しい人。どうやら婿の顔を立てておくというスタンスらしい。博学であり何でも一言ある人なのだ。おかちゃんは相好を崩して喜んだ顔がかわいい。期日が近付いてくるにつれて期待が膨らむのか、何を着ていったらいいのか、買うものは何をそろえればいいのか、、と頻繁に電話をかけてくる。どうやら相当に期待しているようなのだ。これはエライ事になったなあ。戦中派である。空襲も経験して辛酸を嘗め、衣食住全てにわたって不便な生活を過ごしてきた世代だ。焚き火は言うに及ばず、様々な事に知恵の一端を示してくれて、キャンプ遊び大冒険に積極的に参加してくれたら狙いは大成功だ。

計画と準備に大わらわ
場所は5月に経験済みのロケーション、奥秩父廻目平キャンプ場にした。電話をして確認したところ、紅葉はまだ色付き始めたばかりとの事。日本のヨセミテと言われる場所だけに紅葉狩りの相当の混雑が予想された。それならば一日早く休みを取り、混雑が始まる当日朝にキャンプ場を発つというのはどうだろう。あくまで自然がいい。人に溢れた環境では趣に欠ける。漆黒の闇の中で焚き火をチロリチロリというのはどうだろう。、、、。見上げれば満天の星空があるというのはどうだろう、、。あれこれ演出にも知恵を絞り出したお陰で、薄くなりつつある頭が更に薄くなってしまったようなそうでないような、、。

基本的には山の道具しかないのだが、、新品同様中古REIテントと山岳用のテントの2張りがある。揃いのシュラフは両親にあてがい、われわれは自宅の羽毛布団一枚を圧縮して持参する事にした。テントマットは、これは買わねばなるまいということで二人分を新調した。(今思えば毛布でも良かった)
鉄板 頭を悩ました料理についてはバーベキューに決定。焚き火を前提にして鉄板を一枚準備した。もし当日どしゃぶり雨なら小屋に泊まらせる算段だった。タープがあればと思ったが、検討する時間も何より先立つものがなかった。


10/08(金) いよいよ出発!
2BOXの小さな車の荷室に全てのモノが入った。工夫すればなんとかなるもの。両親を迎えに行き、無事中央高速に乗り入れる。最初のパーキングで爺さんに車の鍵を渡す。仕事柄、車に関しては一言ある人なのだ。是非ともボロワーゲンのハンドリングを試してみたいらしい。車に関する蘊蓄をあれこれ語って聞かせてくれる。とてもいい気分らしいのだ。しめしめ乗ってきたではないか。あいにく八ヶ岳、南アルプスは雲に隠れて見えなかった。天候は回復傾向にあるというが、ワイパーを動かす場面もかなりあった。須玉インターで下車。清里を経て川上村に向かう。段々いい天気になってきた。

11:00現地到着。奇岩が林立する風景はかなり異様だ。山に向かうサイトにはたくさんのテント花が咲いていた。反対の川沿いのサイトにはまったく咲いていなかった。「明日は」予想通り満杯なのだという。受付を済ませて川沿いのサイトに陣取る。切り取り次第勝手にやってね!の広さ。テント二つをあっと言う間に設営。両親にも手伝わせたことはいうまでもない。参加することが「遊び」なのだと優しい心づかい。(半ば強要に近いというべき)そこいらに転がっているごろた石を運んでカマドを作った。一枚の鉄板を置いてバーベキューの準備は整った。薪は山荘から一束500円で仕入れた。

樹の実 樹の実 樹の実 樹の実 樹の実

妻と両親はお散歩へ、婿はお昼寝をきめこむ
妻と両親はお散歩に行くという。水入らずで散歩というのも、そうあるものではない。金峰山登山口までは往復3時間もあればいいだろう。人の気配のない山道を道草を食べながら歩くのも素敵なことだ。路傍に顔を出したキノコを愛でるのも楽しいことだ。

3人を送りだした私は、徐にガソリンバーナーを取り出し珈琲を立てる準備を始めた。どさくさに紛れて買って貰った「ホエーブス625」のデビューだ。真っ赤な缶から本体を取り出しマニュアルを読みながら作業を行った。山を始めた記念にと、知人から譲って貰った「オプチマス199」というのが既にあり、それを皮切りに「SIGG JET」を使いこなしていたので要領はたちまち理解できた。使用前後に増締めが必要なことが書いてあった。念の為、分解を試みて構造などを把握してみた。これが歴史に名高いホエーブス、、ふむふむ、、。復刻版なのでケロシンは使用できない作りとなっているが、ガソリン仕様で十分。かなり重い。こういうものを山に持参した昔の人の苦労が偲ばれる。ガソリンをSIGGボトルから注入する。600ミリリットルの容量は正しくキャンプ向きの仕様だ。
余熱にはペーストを使用した。これをめんどくさがる人がいるようだが私には楽しい作業に思える。一発点火、、サイレンサーが効果を上げているようで静かな燃焼音。水を注いだパーコレーターに豆を入れて台座に乗せる。がっちりした台座で安定感は抜群だ。炎の加減ができるのはありがたい。これでうまい飯が炊けるというものだ。

珈琲を飲み終えてから近くの森に遊んだ。森のあちこちにキノコが生えている。残念ながら名前を知らない。そういえばこちらに来る途中に「キノコむら」なるテントがあり興味本意に覗いてみたことだった。その中のひとつに触ったらけたたましい声が飛んできた。「触ったらいかん!」ひぇーーと恐れをなして声のする方向を見たら山姥のような形相のオババが怖い目をして詰るように見ていた。100g1200円という高値に驚いた。むろん買わずにその場所を後にした。

テントに戻ってゴロリ横たわる。傍らの雑誌(out door10月号)に手を伸し読み始めた。いつのまにか眠っていたようだ、時計は3時を指していた。そろそろ戻ってくる刻限だ。いい昼寝ができた。喜々として3人が帰ってきた。満足の散歩ができたようだ。

夕餉の支度は"焚き火おこし"から
焚き火 珈琲で一服した後、両親にはお風呂に入って貰う。ここの浴槽は広くて清潔なのだ。その間にカマドの支度に取り掛かった。果たして一発で火がつくか、、。小枝を組んでおもむろに点火。緊張する一瞬だ、、神よ悪魔よ、、頼みます。流石に山荘で購入した薪(松材)は乾燥していてよく燃える。燃やし過ぎて薪が足りなくなると買い足しに走ることになる。そうして山荘は潤うという図式だ。(結局、翌朝までに三束買い込んで燃やしてしまった¥1500なり)薪を燃やして熾火ができあがった頃「いいお湯だったあ」と両親が帰ってくる。手にはお土産が、、、観光モードに入っているようで微笑ましい。火の番を両親に任せ、入れ代わるように我々もお風呂へ行った。

夕食の時間となる。ビールで乾杯。うーん、うまいなあ。鉄板が熱くなったのを確認して油を流す。肉、野菜を並べるとジュージューおいしそうな音。バーベキュー初体験という訳だ。絶妙のタイミングでおっかちゃんが薪をくべる。昔とった杵柄、どうすればよく燃えるかを身体で知っているのだ。ただ燃やせばいいのではなく、どう燃やせば「いい加減」になるのかを知っているのだ。便利な都会生活に身を置いていても忘れるものではない。昔話に花が咲く。とてもうれしそうだった。

漆黒の闇の頭上に満天の星
ランタン ガスランタンを灯し、ごろた石を並べて棒を斜めに固定しランタンを吊るす。小さなランタンだが十分に明るい。見上げると星がぽつりぽつり。漆黒の闇の中、我々だけの酒盛り。まさしくキャンプの醍醐味だ。夜露が草草におりてきた。
焚き火もそろそろ終わり。仕上げはパーコレーター仕立ての珈琲ということになる。こういうふうに珈琲を飲めるなんて思わなかった、、と嬉しそうに顔を綻ばせる両親。風吹かれて飛んで行く頭髪の一本や二本、、、どうってことないなあと私。できれば自分の両親も連れてきたかった、、、その頃はそんな余裕はなかったなあとしんみりしみじみ。

ランタンの灯を消す。漆黒の闇の頭上に満天の星。「わー綺麗だあ」と母親の声。トイレと歯磨きを済ませて就寝タイム。妻がテントに案内し、シュラフとシュラフカバーの使い方を指南する。蓑虫スタイルで眠る、、そういうことも初めての経験なのだろう。見届けてから我々もテントに隠る。自宅で使っている羽毛布団を二人で使う。狭いテントだから十分に暖かい。ほぼ3秒くらいで私は深く寝入ったようだ。

なにやら車の往来が激しくなってきた。ライトの灯が交錯して眩しい。人の声もさんざめく有り様。なにごとならんと時計を見ると0時近かった。こんな時刻に車が入ってくるかあ、、、。次から次へと車が到着しはじめる。きりがない。仕事を終えたその足で乗り込んできたようだ。連休初日の混雑は、夜中から始まった。両親も起きてきた。この騒音では眠れまい。空を見上げると更に星々が輝きを増していた。諦めてテントに入る。寝るしかないではないか。ペグを打ち込む音、人々の話声が段々遠くなる。驚いたことに両親は、あの時間から散歩に出かけたそうだ。ふたり揃って丑三つ時の散歩とは、、なかなか趣があるなあ。

樹の実 樹の実 樹の実 樹の実 樹の実

10/09(土) "ペグ"で朝飯の"餅"を焼く
9日朝5時に目が覚める。バーナーに火を灯して水を沸かす。両親も既に起きている気配だ。暖かいお茶を飲ましてあげなくてはいけない。カマドに火を起す。朝飯は餅と決めていた。肝心の網を忘れてきたらしい。うーん。朝飯抜きかあと嘆いたらオヤジが鉄棒があれば焼けるよ、、。鉄棒、、そんなものはないなあとしばし考えた。あるある、、鉄ではないがアルミのペグが、すくなくとも20本はあるぞ!テントのアルミを引っこ抜き泥を拭って鉄板の上に置いた。その上に餅を並べる。余熱でこんがりプロ並みに焼けるのだ。うーん伊達に歳はくっていない。これぞ生活の知恵。

両親が朝の散歩に出かけた。さっそく撤収の準備にかかる。既に周囲はテントの花。昨夜から今朝にかけて移動した組、相当いたようだ。続々到着するキャンパーが場所の確保にやっきになっている。大きなタープの設営に手を焼いている。あれはけっこう難しいみたいだなあ。あんな大きなタープはいらんなあ。我々の領域には誰も近付かない。カマドから立ち上る煙の威力に、どうやら恐れ入っているようだ。それが仁義というものだ。(と、エラソウニ)

夜露で濡れたテントを乾かし、こまごまとした道具を整理して車に積み終わったのが10時近く。混雑するキャンプ場を後にして帰宅の途についた。

別れ際の一言
 「これに懲りずにまた連れていってね」
 「もう寒くなるから春になったら行きましょう」
かくして、おとっつあんとおっかちゃんの初めてのキャンプは大成功???。
私は疲労困憊して、こんこんと眠り続けた次第。そうこうする内に休みが終わり、明日から仕事となった。この週末には山屋に戻ることとしよう。
晩秋の季節に、奥深い山の中、しみじみキャンプもいいなあ。

文責: 青島原人


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