ザック  お正月は、丹沢三ノ塔まで 

今年初めての登山は丹沢でした。以下は、その時の記録です。家を出てから帰宅するまでが登山と思っていますので、どうしても冗長に流れてしまいます。まあ、その時の気分だけは書き込んであると思います。。


【日 付】 1999年1月1日
【場 所】 丹沢、ヤビツ峠から三ノ塔ピストン


一年の計は元旦にあり、、、
と古の人は言いました。という訳で昨年に引き続いて今年も丹沢に遊ぶことになった。元旦は丹沢で、正月三日は鎌倉を逍遥というのが我が家のパターンになりつつある。何はともあれ、健康であれたことに感謝。例によって優しく相棒を揺り起こし(この場合、蹴りおこしと同義、はは)、迅速に準備を終えて5時15分家を出る。元旦の朝、空気は冷たいけれど不思議と高揚感に包まれる。吐く息が白く流れる。東の空が次第に色彩りを増してゆく。夜明けが近いのだ。

昨年は、果敢というか無謀にも、暮れから一泊二日のテント行を強行したけれど、今回は、めでたく年男を迎えたの相棒の「忍びよる老い」を考慮して、安直な日帰りプランとする。ほぼ2ヶ月登山していなかったので体力的に不安があった。無理をすれば行けないこともなかったが、なにせ軟弱な相棒がいる、、。
駅に向かう道すがら眺めた夜明けの月、この世のものとも思えぬ妖しい美しさにしばし見とれる。写真をパチリ。開放値F2.8の威力とフィルム感度400の効果で早いシャツ夕ーが切れる。ちょつとすごい。でも重いなあこのレンズ。今流行りのオートフォーカスは、やっぱり軽くて便利だなぁ。

元旦の朝のこととて人影まばらな電車に乗り込む。途中のコンビニで求めたサンドイッチをほうばり、テルモスのコーヒーを飲み終える頃、ようやっと相棒が覚醒する。
 「今、どこ?」
これだからなあ。新宿から小田急に乗り換えて泰野まで浅い眠りをとることができた。昨日は紅白をとうとう最後まで見てしまった。いつも除夜の鐘を聴きながら布団に潜り込む癖がある。
泰野には7時45分に到着。雪を冠った富士を車窓から一瞬垣間見ることができた。8時18分、セビツ峠行きバスに乗る。満杯。いずれも中高年登山者ばかりだった。そういう私たちも立派な中年、、。

冷たい風が心地良い
ヤビツ峠では、何軒かの店が開いていた。お正月登山者が多いのだろう。そそくさと身支度を整えて、まず富士見橋まで軽いタッチで歩き始める。風は冷たいけれど、降り注ぐ日射しが暖かそうだ。富士見橋で暖気運転を完了した。ほぼ2ヶ月ぶりの山。霜柱が溶けて泥寧化した道を一気に三ノ塔まで登る。汗がどっと吹き出してくる。丹沢の山並を一望。冷たい風が心地良い。ああ気持ちがいい。午前11時、東の方角から雲が湧き立ち、富士の山頂を覆い隠そうとしていた。何とか富士に間に合った。もう少し遅ければダメだったろう。

稜線の向こうに見えるのは尊仏山荘だろうか。今年もいいことがありますように。色とりどりのパラグライダーが"とんび"位の大きさで空に浮いていた。風の中にいる。気持ち良さそうに空を散歩している。寒くはないんだろうか。着地はどんなふうにするのかなあ、、、。あの高さ、、失神しそうだ。カメラに写す。多分、見た通りには写らないだろうけど、、。見た通りに写すには技術と道具が必要ということに最近ようやく気が付いた。

富士のお山が見えれば満足だ
今日はここまでにしよう。丹沢の全景と富士のお山が見えれば満足だ。さっそくストーブを炊いて暖を取り始める。ザックおにぎりとラーメンでお昼ご飯。偶然にも、昨年、大倉の方から登った時にお世話になった登山者と出会う。一年ぶりの再会だ。そういえばお母さんと娘三人連れのパーテイもいたっけ。あの人たちは、今年も登ったんだろうか。毎年、一年のはじまりを丹沢登山で迎える人も多いらしい。

午後1時、下山を開始する。富士見橋で名水100選に選ばれたという水場に立ち寄る。大勢の人が車を列ねて来ていた。ポリタンクをいっぱい並べて水を汲んでいる光景。まさか仕入れに来ている訳ではないだろうけれど、売るほど汲んでどうしようというんだろう。 登山者は、僅か2.3名を数えるだけ。バスの連絡まで1時間半あった。ヤビツ峠のバス便は一日二回しかない。バス便があるだけありがたいと考えることにする。

下山後は甘酒と珈琲で
バスを待切れず、蓑毛まで徒歩で下山する人もいたが、バス停上の山荘で懐かしい達磨ストーブを囲んでお茶を飲むことにした。待合所として、なかなか繁盛している様子だった。甘酒と珈琲を頼んだ。おばあさんが時折ストーブに薪をくべてくれる。こういう暖かさは久しぶりだ。片隅に無造作に置いてある、黴の匂いのする古ぼけた雑誌を手に取った。昭和16年刊行「山と渓谷社」の白黒写真集。ほぼ60年前の代物だ。写真の撮影記録を見ると、聞いたこともないようなカメラ機材で撮影されていた。(多分、ドイツ製だと思う)

一ページ一ページ丹念に読み始める。表現がたおやかでのびのびしていた。時代が違うなあ。皇紀2600年表記になっていた。昭和16年という時代が彷佛とした。戦争中でも登山に関わり、こういう本を出す人たちがいた。白黒写真の画像は多少色褪せてはいたが、当時の山岳スタイルは十分に伝わってくる。冬山への誘い、、いつかそれを相棒と果たしたい。寒がりの私には無理かなあ。

文責: 木蓮

後記:ヤビツ峠から塔ノ岳を目指すコースの途中、三ノ塔は、富士山の展望がとても素晴らしいところです。 空気が澄んだ冬場は特におすすめですよ。
ログハウス風の休憩舎や展望盤もあり、場所も広くて、お弁当を広げるのにも最適。塔ノ岳までの自信が無い方は ここまででも楽しいと思います。


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